ポスターカラーで空を描く

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~アニメーション美術の技法で「青空に浮かぶ雲」を描く~
愛知県長久手市の「愛・地球博記念公園」で、アニメーション美術監督の渡邊洋一さんが講師を務めるワークショップに参加しました。
ポスターカラー3色で「青空に浮かぶ雲」を描きました。

今回参加して感じたことを、備忘録として書いておきます。


ワークショップの前に、ライブペイントがありました。
ライブペイント・ワークショップ、それぞれ2枚、背景画を描かれていました。
時間は1枚につき15分程度。
短時間の中でも的確に描かれていて、すごかったです。
私は描くのに時間がかかるので、早く描くための技術も見られて参考になりました。


1.今回参加した目的

・グラデーションを自分の思い描いたように描けるようになりたい。
・アクリルガッシュでグラデーションを作る時と、ポスターカラーで作る時の違いを知りたい。(※これは後日また書きます。)

ちなみに、私が使用しているのはこちら。
アクリルガッシュ:ターナーのアクリルガッシュ、アクリルガッシュジャパネスクカラーポスターカラー(ガッシュ):ニッカーのデザイナースカラーがメイン。
ポスターカラーを使うことも。

2. 手順の中でのポイント

・「水張り」(この場合は、水張りテープを用いずに、紙両面に刷毛で全体的に水を含ませる工程)した後、水が紙から滴るほどではなく、写りこみをする程度の水分量の時に描き始める。
 慣れてきたら、この乾かす合間に絵具を溶いて準備。

・空の色の幅に合わせて、濃い方から
 セルリアンブルー:7号筆(幅が太い)
 ライトブルー:6号筆(中くらい)
 ホワイト:5号筆(細い)
 の筆を用いる。

・グラデーションを描いた際の横向きの筆跡を残すように、画面に触れるか触れないか程 度距離で、天然毛でできた毛の密度の低い乾いた30号の刷毛でサッと取ると、横筋が見えなくなる。
 描くたびに拭った絵具が画面に再度付かないようにするために、都度キッチンペーパーで拭う。

・グラデーションを描く筆の絵具の量は、皿の縁である程度拭ってから描く。
多すぎる場合は、雑巾で吸わせる。多いと画面がにじむ。

・グラデーションを作る際には、横向きの筆の動きを少しずつずらして描いていく。
 1行目線を引いたら、少し重ねるような形で次の行を引くイメージ。
 間が空いてしまうときれいなグラデーションにならない。
 絵具の状態により、押し込むように描く・軽く描く の調整を見極めながら描いていく。

・光が当たる向きと、影が入る位置を意識する。
 雲は球形がいくつも重なった形とイメージするといい。
 光が当たるところ・影ができるところを描く。

・雲の高さは一定。高さがバラバラだと、違和感が出てしまう。

・雲の部分はグラデーションを作り終えてから、乾かないうちに削用筆(さくようふで:筆の側面が削られた線描筆。穂先が細く腰も強い。)で、絵具を拭い取る「水消し」を行う。
 そうすると、背景色に影響されず、雲が描きやすい。

・雲は、平筆でも削用筆でも、どちらで描いてもいい。

・影の微妙なグラデーションは、混色して塗る。
 ブリリアントピンクをわずかに足して、ライトバイオレットのような色を作って影にすると、雲の奥行がさらに出る。

・渡邊さんがワークショップの机上で出されていたポスターカラー13色は、自然物の背景を描くのに適した色。
 普段は27色使用されているそう。
 色の内容は、以前と比べてもあまり変わっていないそうです。

・ワークショップで複数モチーフがある際の下描きは、鉛筆やシャープペンで「あたり」をつけておられました。
 アニメーション背景画の時は、カーボン紙を敷いてトレース後に描くそうです。
 モチーフが複雑で時間がない場合は、紙をコピー機にセットし印刷して描くこともあるそうです。


3.体験してみてわかったこと

・「水張り」は、早描きする際に、ポスターカラーの伸びの良さを最大限に生かせる。

・とにかく量を描いて、うまくいく時の絵具の量や筆運びを覚えるといい。
 同様に水張り後のベストな紙の状態も把握できるようにしたい。

・普段使っている絵皿は小さい。
細かい彩色をする際はそれでいいが、広い面積を地塗りには、もうひと回り大きいと作業しやすい。

・紙を置く机上は、メラミン製のようなつるっとした面やビニルシートのようなものだと、絵具や水張りとの相性がいい。
ホワイトボードみたいなものの上で描くのも向いている。
水張りテープで貼る「水張り」の際は、厚めのベニア板や合板の上に紙を置いていた。
紙をゆっくり乾かしながら描くならば、つるっとした面のものを下に置くと良さそう。

・普段から背景に描きそうな雲・山・森などの自然物を、意識する。
どう影が当たっているか、植生はどんな状態か、描くとするならばどこにメリハリをおくといいか、を意識してみていると、いざ描く時に役立ちそう。
 違う季節や時間帯で直接見てスケッチしておいて、いざ描く時に写真を見ながらでも感覚が思い出せるようになっていると、絵に深みが出そう。


4.感想

自分で描いている時は、いつも感覚的に行き当たりばったりで描いていたなあと思います。
うまくいく時はうまくいきますが、今日はうまくいかないなあ…という時も。
我流でやっていたところが、どういうところが原因だったか。
一因が少し見えた気がします。
後は一度集中して量を描くと、コツがつかめる気がします。

実際に絵本原画用に描く時は、必ずしも今回の雲の描き方をしないかもしれませんが、この技法をどこかで役立てそう。
にじみを生かして描く場合の時短の方法のヒントをもらえました。
グラデーションをいろいろな場面で描けるようになりたいため、今回のワークショップはとても有意義でした。

参考までに、今回描いた絵を載せます。
雲の描き方・影の描き方は、今後の参考にするために、手を入れていただきました。
なので、作品というよりは、参考作画としてご覧ください。

上の絵は、湿らせた紙が乾かないうちに描けたため、雲のふんわりした感じが出ています。
下の絵は、乾いてから描いているため、筆のタッチが多めに出ています。
どこに光が当たり、影があるか。
画面全体を見て、雲のボリュームの調整を取る。細部は全体像が確定してから追加するといいようでした。

机の上を広めにとって、再度描いてみます。
青空以外でのグラデーションや、その上にモチーフ描くことも試したいです。